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「斎藤さんも笑うんや。」
「俺も人間だからな。」
三津に物珍しそうに見られているが,気配を感じない三津の方がよっぽど珍しい。
三津がどんな人間か気になる。tote bag 男 香港
ただ部屋で膝を突き合わせるだけじゃ何も分からない。
「町にでも行くか…。」
外へ連れ出したらどんな行動をするか興味がある。
斎藤は独り言のように呟くとゆっくり立ち上がった。
「私も?」
「当たり前だ。」
ここで置いて行っては小姓として借りた意味が無い。
「やったぁ!」
久しぶりに町に出れるとあって両手を高々と上げて喜んだ。
「腕を出すな。それより支度はいいのか?髪を結うだの紅を引くだの。」
子供のようにはしゃいでいた三津が露骨に嫌そうな顔をした。
「斎藤さんが連れて歩くの恥ずかしいって思うなら頑張りますけど…。」
出来たらいつものままがいいと口を尖らせた。
「別に構わん。散歩程度だ。」
興味があるのは三津の中身,把握したいのは気配であって見た目は関係ない。
「では行くぞ。」
三津は嬉々として首を縦に振り,斎藤の背中を追いかけた。
「あのさぁ,お三津取られて悔しいのは分かるけどその顔止めなよ。土方さんじゃあるまいし…。」
平隊士たちが怖がると平助が総司の顔を覗き込む。
目も合わせてくれないし,ピリピリした空気が漂う。
「…男の嫉妬は見苦しいぞ?」
冗談っぽくおどけて振る舞うが冷ややかな目を向けられた。
あの後捕まえた隊士たちを目の笑ってない笑顔で容赦なく滅多打ちにして,
「あー楽しかった!」
とか言ってみるも完全に負け惜しみ。
これ以上被害者を出す訳にもいかないと,永倉と原田に立ち上がらせられた平助。
『こう言う役はいつも俺なんだから…。』
総司の気を紛らわすべくこうして縁側で将棋を挿しているのだが,
『全然将棋に集中しないじゃん…。』
総司は眉間にシワを寄せ,腕を組み完全に不貞腐れている。
「そんなんじゃありません!
私は三津さんを貸し借りだなんて物のように扱ってるのが許せないんです!」
『だからそれは三津に特別な感情があるから許せないんだろ?見事な嫉妬じゃん…。』
とは心の中で思うが,今の総司には何を言っても無駄だと分かる。
言葉の代わりに深い溜め息をついた。
歩いてはちらり。
また歩いてはちらり。
『いるよな。確かにいるんだが…。』
斎藤は跳ねるように後をついて来る三津を確認する。
「嬉しいのか?」
「はい!」
これだけ感情を全面に押し出しているのにその存在は空気そのもの。
別に不快感はないけどあまり背後に居て欲しくもない。
『行き先も告げてないのにな。単に町へ行くだけでこれほど上機嫌になるとは。』
「何が嬉しい?」
そう聞かれて三津は足を止めて指を折り始めた。
「外に出れたのと,行くのが町なのと,土方さんから解放されたのと…。」
「もういいぞ…。」
聞いてたら長くなりそうだから止めた。とにかく嬉しいのは分かった。
「あと斎藤さんが私の気配を知ろうとしてくれてる事。
私も斎藤さんの事よく知らんからなぁ。」
こうして出掛けられるのが嬉しいとにこにこ笑う。
「そうか。お前の実家はどこだ?」
再び歩みを進めながら問いかけた。
やっぱり背後に居られては落ち着かないから横に並ばせた。
三津は四方の山々を見渡して,あっちだったかこっちだったか。
右に左に目を動かして首を捻った。
「一体誰があんな山奥からあんたを連れて来たんだ。」
「生まれは多分あの山の向こうやけど町には去年から居ましたからね!
甘味屋で居候しながら働いてた所を土方さんに捕まったんですよ。」
山奥で捕まったんじゃないし,昨日今日で出て来たんじゃないと頬を膨らませた。
『捕まった…。』
その表現が何ともしっくりはまり過ぎていて吹き出してしまった。