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「それが発見された遺体の中にはいなかったようですね。」「では、いずれに?」「我等も捜しておりますが、昨夜来行方不明のようですね。」(行方不明、としたらチャードも又ハンベエとやらに殺されたのか。しかし、不味い。不味すぎるぞ。派遣されていた軍監察が全員死亡したとなると太子達はどう思うであろう。ハンベエという男一人に斬り殺されたと申し述べても信じてもらえようか。仮に信じてもらえたとしても、我等は何をしていたのだ、という叱責が下ろう。・・・・・・待て、チャードが死んだとするのは早計なのではないか。もしかしたら、逃げ延びて真っ直ぐに太子の軍に報告に向かったのではないか。とすれば、私が協力しなかった事も・・・・・・。)ノーバーはギリギリとこめかみの辺りを何かで締め付けられているような痛みを感じた。起床時に感じた安堵の温もりも吹き飛ばされていた。手も足も首の下も、身を縮めさせられるほどにぞわぞわと寒い。「兎に角、陣中、陣地周辺、そしてその死体が横たわっていた場所一帯、隈無くチャード殿を捜せ。見付けたら、すぐ報告せよ。」 早鐘のような動悸を気取られまいと努めながら、試管嬰兒成功率 ノーバーは命じた。顔が蒼くなっているのは隠しようもない。 命令を受けた部隊員が駆け去って一息吐く間もなく、又あの忌まわしい声が耳に響いて来た。「大変な事になっています。三キロほど先の街道に軍監察に来ていた者達の死体が累々と横たわっています。人数は派遣された軍監察員のほぼ全員、百十三名です。」ノーバーは斥候部隊の報告に肝を潰した。「一体何が起こったのだ。」「現場の状況から判断すると、戦闘と言うか、斬り合いが行われたようです。それも驚く事に死んでいる者のほとんど全部が一太刀で絶命しています。」そう告げる部隊員の説明を聞き、『フナジマ広場百人斬り』、『タゴロローム二百人殺し』、とハンベエの風評がノーバーの頭を走った。昨日のチャードの話は本当だったのか。がっくりと肩を落とした貴族軍代表であった。「それで、軍監察員達を統括しているチャード殿も亡くなったのか。」 驚愕に力を落としながらも尚ノーバーは質した。『ホホホホ、ノーバーよ。妾を裏切った報い、今度こそ本当に破滅じゃのう。チャードは太子達の下に向かったぞよ。事情を知れば、太子達はそちを赦しは済まい。元々そち等は信用もされておらぬし、当てにもされておらぬ。此度の事でいよいよ目障りと成り果てたに相違あるまい。攻めて来るぞよ、太子達の軍勢が。そちの破滅はもう間もなくの事じゃ。アハハハハ。』痛む頭におっ被さるようにモスカの嘲り笑いが響き続ける。(太子の軍が攻めて来る。・・・・・・いやまさか・・・・・・しかし・・・・・・。マッコレは私を殺そうとした。もし、太子の軍に背後から襲い掛かって来られたら。)千々に乱れる思いの中、ノーバーは極々信頼できる部下を呼び寄せ、太子の軍の様子を探って来るように命じた。イザベラと別れたハンベエはその翌日の明け方、つまりノーバー達が軍監察員の死骸の山を発見して大騒ぎを始める前にはモーセンビキ村に戻り、村の民家の倉を借りて仮眠を取っていた。一応、コデコトマル平原に既に貴族軍が野営をしている事、軍監察員百余名を斬殺した事等は早馬でベッツギ川に着陣しているはずのモルフィネスに報告を送った。モーセンビキ村での防諜行動はハンベエの突出行動なので、このまま貴族軍達との戦闘に突入した場合の王女軍全体としての方針はまだない。