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「郤参軍、なんだ」
「蜀として、魏皇帝に対し降伏勧告を行ってみてはいかがでしょうか?」
「ほう。その真意はなんだ」
そんなことをしても降るわけがないのはわかっている、つまり副次的効果こそがねらいだな。
「少なくとも使者が首都へ入っinternational school hong kong island ている間は戦闘を開始しないでしょう、一日の時間稼ぎです」
ふむ、一日を得るために失うものは大きいはずだ。これをどうやって却下したものかな。
「郤参軍よ、それはいささか思慮が足らないと思われるが」
呂軍師か、任せよう。珍しく他人の意見を否定して掛かる。
「若輩者故気が回らずにいます、何卒お考えをご教示くださいますよう伏してお願い申し上げます」
「蜀を代表しての降伏勧告であれば、高位の者を送る必要がある。先の例を以て鐙右将軍以上の者を。即ち鐙将軍或いは我が主か魏将軍」
蜀という国家を総覧しても鐙将軍の上は十人も居ない、何より近隣には居ないのだ。思い付きで発言したのでなければ、鐙将軍に行けといっていることになる、何せ俺という選択肢はないからな。「事実上鐙将軍を行かせることになるだろうが、魏の宮廷でどう対処するだろうか。皇帝は侮辱されたと怒り狂い、諫める者は処断されるのが目に見えている。決戦前夜で敵将を前にしていれば、これを切って士気を高めようとするのは必定。我等は有能な司令官を失い得るものはない。それでも郤参軍が降伏勧告を進言する理由があるのならば聞かせてもらいたい」
つまりは鐙将軍に死ねと言っていることになる、もちろんそれでうまく行くならば命を差し出して来るだろうが。
「そ、それは……そこまで考えずに発言したことを謝罪いたします。申し訳ございませんでした」
呂軍師に謝罪した後に、鐙将軍にも謝罪する。目を閉じて深く息をしてから鐙将軍は「構わん、気にすることは無い」そう応じた。考えは浅いがこれは良い勉強になっただろう、萎縮させては行かんな。
「郤参軍の言を却下する。だが策を上げたことは評価する」
「いえ、某の拙い考えでは……」
「恥じるな! お前は今一歩を踏み出した、その勇気を認める。考えが拙いのは経験の差だ、誤った道を行こうとすれば年長者が諫める、前へ進む心意気を忘れるな。俺から言うのはそれだけだ」
「は、ははっ! 以後精進いたします!」
ふん。鼻を鳴らして不問にする。どんよりとしていた雰囲気が元に戻る、別に何が変わったわけではない。◇
偽兵の入城を行い、二つの軍が城を出た。さて、寓州城には兵力三万、うち一万は南蛮軍なわけか。洛陽一帯を無防備には出来んからな、度胸が必要になって来るぞ。
城壁には様々な軍旗が林立している、城外に溢れている兵も多数だ。という演出をしている。六万の兵がここに存在するように動かねばならん。
離れた軍が何かの策略かと疑うような動きと連動させたい、その為にはこちらが籠もっていてはうまくない。二万五千の蜀兵を城外に、南蛮軍を正門の前に置いて、城壁に親衛隊を横並びに立たせている。住民の出入りは厳しく規制し、商人の入城のみ許可している。
城楼から周囲を見渡すと、側近に語り掛ける。
「李項ならどう仕掛ける?」
守りではなく攻めなのを強調した、それ以外の縛りは無しだ。部下等の手前軽率な見立ては出来ない、解らずとも失敗が無いように返答する義務と責任がある。
「南方の襄城を攻め立てるのがよろしいかと」
「何故だ」
「一つは首都を攻めるには道が狭すぎます、もう一カ所の拠点が必要になってきますので」
左右から奇襲を受けるような一本道では攻めるに攻められんからな。二カ所あれば少なくとも警戒するのは半分で済む。